リコッコ家のホームデコール雑記帖

旅して巡って、ボーホー・ラスティックな家

白や灰に重ね塗る色

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白い壁の家はいい。白壁の間を歩いて進んで、角を曲がっても扉を開いても見える色がまた白で。この家の壁は隅から隅まで白い。窓に据えた木製や布のブラインドも、台所の棚扉もすべてが白い。築年数がだいぶ経っているこの家は、どこまでも真っ白く塗りつぶすことでその古さが美しい風合いに転じているようなものだ。

北米のカウボーイの地とも言えるここで、アジアや中東からの背景が一目で見て取れるようなアンティーク家具を置く。不釣り合いそうなものたちを悪目立ちさせずに慣らして、ここにあるのが当然のように旨く収める。様々な地で日々を重ねてきた家具を、白が包している。ここではそれに浸った暮らしだった。

 

新居と思い定めている家は、地下はコンクリートで何もない。将来的に部屋その他を作れるよう、地上に出ている部分に窓だけはすでに据えてある。1階の壁は明度があまり高くない白で、2階はやや艶と僅かに重さのある灰色だ。

壁ひとつとっても今の家とは雰囲気がまるで違う。若いのだ。この壁に囲まれていては情緒的に相容れなくて、その若さをきっと持て余してしまう。これを恐怖とは表現したくないが、どうしてもそれに似た違和感を拭えずに落ち着かない。

塗の色を変えたい。その思いは膨らむ一方なのだが、プロの手による素晴らしい仕上がりなのだよ、塗り立てなのだよ、という事実が頭を擡げるゆえ家族に向けてなかなか言い出せないでいた。

などなどとに加えてその他にもいろいろと紆余曲折あったわけだが、結果としては壁の色を塗る許可が家族から出た。この時点ではまだ遠慮していると自覚しながらも、居間の壁は黒に近い濃紺(ペイント名:真夜中のモスクワ)にしたいと提案した。どうだろうか、突飛な提案だと却下されるかと思いつつだったが、諸手を挙げての賛同こそなかったものの反対意見は飛び交わなかったので拍子抜けした。

拍子抜けしたら、すぐその次に疑念が浮かぶ。彼らにとっても私自身にとっても、面白くもなく有益な提案でもなかったのではなかろうかと。続けて、玄関の壁はベルベット生地のようなとろりと滑らかな質感と艶のあるこれまた黒を落としたような深い赤にしたいんだよね、とも言ってみた。すると、これにも際立った反対意見は出なかったのだ。欲して提案しているのだから反対されるのを望んでいるわけはないが、少しの驚きも齎せない提案であるらしいことに落胆した。驚嘆されるでもなく。歓迎されるでもなく、つまらないことを言ってるんだ、と。濃紺の居間や深紅の玄関をいいと思うのは揺らがないが、その家の中でそれを実現するべきかという点には揺らぎがあった自分に気付いた。そう確信してしまったらもうそれは進められない。

そして新たな提案の末に説得に次ぐ説得の後の結論。塗料をまだ買っていないから変更の可能性はゼロではないが、ほぼ決定したのが5色。すでに塗られている白と灰を活かしつつの5色だから、1階から2階で家の壁の塗り分けは7色となる。